新人獣医師ちゃその記録

🦀新人獣医師の奮闘記&体験談🦀

安楽死について

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どうもちゃそ (@chaso_vet)です

前回の記事でラト丸の調子が悪いとご報告していました

ラト丸は2021年5月14日安楽死にて永眠しました

1年半というラットにしては短い一生でしたが、

私のそばで精いっぱい生きてくれました

 

 

ラト丸の病状経過

うちにきたときからたまにくしゃみなどある子でしたが

一般状態はよかったため無治療でした

2020.10 

異常鼻音を聴取するようになった

 点鼻薬(ゲンタマイシン)を点鼻→改善

 

2020.12

異常鼻音再発、点鼻薬でも改善なし

この時点でレントゲン、鼻腔と肺は問題なし

 

2021.1 

異常鼻音、増悪傾向、レントゲンで右肺がやや白い(炎症あり)

内服を開始

抗生剤:エンロフロキサシン 

消炎剤、ビタミンも混合

 

2021.1末

改善なく抗生剤:ドキシサイクリン追加

消炎剤、ステロイド、胃薬、気管拡張剤、ビタミンなど内服に追加

ネブライザー購入、自宅で毎日ネブライジングを行う

ネブライザー液には抗生剤、気管拡張剤、ステロイドを含む

 

2021.2末 

レントゲンにて、肺が綺麗になったのを確認

念のため、ステロイド半量にし1週間薬を続け、投薬中断

ネブライザーは2日に1回のペースで続ける

この時点で体重が430g→400gに落ちていた

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2021.3末  

症状再発 異常鼻音ないが、努力性呼吸が見られた

(努力性呼吸とはお腹、胸の横が普通よりもへこむ呼吸

一生懸命呼吸している感じ、体の酸素が足りていない)

レントゲンにて肺が両方とも白いのを確認

投薬を再開、ネブライザーも毎日にする

 

2021.4.13

投薬効果なく状態悪化、点滴開始

起きたら亡くなってるかもと覚悟しながらできることをすべてやる

ステロイド皮下注射

 

2021.4.14

一命をとりとめる、異常鼻音ないが努力性呼吸あり

 

このあと手を変え品を変え、抗生剤を変更し、ステロイドを増量し

点滴を毎日行うも、少しずつ少しずつ体重減少

努力性呼吸、咳、くしゃみ、たまに嘔吐もありました

食餌もえり好みするようになり、ウェットフードと果物、野菜のみを摂取

 

2021.5.13 

レントゲンにて肺真っ白

ほとんど呼吸できていない状態

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呼吸状態の変化は以下の動画にまとめています


www.youtube.com

 

安楽死の決断

5.13の時点までしんどいながらも食欲があり、

甘えたり、散歩に行きたがったりしていました

さらにこの時点でありとあらゆる抗生剤を試し、効果なし

ステロイドや抗真菌薬、抗炎症剤も追加していたためお薬自体の負荷もあったと思います

わたしの思いつく限りの治療をしたが日に日にしんどくなるラトちゃん

5.13時点では来週、安楽死をしようと決めていましたが

5.14 朝から嘔吐、ずっと収まらない嘔吐

(おそらく呼吸できなくて空気を飲んでいることによる)

食欲廃絶、水も薬もフルーツも受け付けなくなりました

 

【もう、だめだ】

 

直観的にそう思いました

これ以上は苦しんで死ぬ以外に道はないと感じました

その足で職場に直行、自身の手で安楽死を行いました

 

安楽死の方法

ラットの安楽死の選択として、

 

化学的方法:麻酔薬や鎮静剤の過剰投与、二酸化炭素吸入、カリウムの静脈投与

物理的方法:断頭、後頭部殴打(これらは麻酔下で行われる)

 

があります

さすがに物理的方法はラトちゃんにはできないと思い

ガス麻酔で寝かせた後、鎮静剤を心臓に直接過剰投与する方法をとりました

ガス麻酔で眠る直前は少し不安そうな顔をしていましたが、

寝た後の薬剤投与で、一瞬で心停止しました

最期は穏やかだったと思います

 

苦しむことなく、スッと命が消える感覚がありました

 

安楽死を選択すること

日本は欧米に比べて安楽死の件数がかなり少ないです

アメリカなどでは助からないことがわかると即安楽死する場合もあるそう

たとえそれが元気な場合であっても、癌の転移などがあった場合など)

しかし個人的には安楽死を選択することは悪ではないと思います

そもそも安楽死を安易に決める人はほとんどいないと思います

その人なりの介護の苦労や治療費の限界

状態の悪い自分のペットを四六時中目の当たりにする心労

様々な要因があると思います

 

わたしの個人的な判断基準としては

 

食欲廃絶

 

取り返せないほどの体重減少

 

これが決め手になりました

飲まない、食べない

これは小動物にとってはかなり危機的であると思います

犬や猫が2~3日食べないのとはわけが違います

小さな体で常に食べているといっても過言ではないげっ歯類

彼らが食べないということはもうすぐそこにお迎えが来ているとわたしは思います

もちろん数日持つ子もいると思いますが、持ち直すというのはかなり厳しいと思います

また、ラト丸の場合は安楽死時の体重が318gでした

健康な時は430gだったことを考えるとかなりの体重減少です

もし、小康状態にはいったとしても、100g太ることはないと感じました

もともと350gくらいを切ったら、厳しいだろうという予想はしていましたが

食欲がかなりギリギリまであったので、お別れを先延ばしにしてしまったかもしれません

 

今の日本では、安楽死に対してかなり過敏な方もいらっしゃるので

獣医師側も提案することは少ないと思います

もし、これを読んでるあなたが介護生活に疲れ

毎日悲しい思いをしてお世話している

また動物がつらそうにしている

そして、自分なりにできることはすべてやっている

治療の反応が悪く、別の治療法もない

 

そんなときは、あなたの心が壊れてしまう前に

獣医師に相談することもありだと思います

とくにげっ歯類などの小動物は病気の進行も早いです

電話でもいいので相談してみてください

 

今回のラト丸の場合は

個人的には呼吸困難で死ぬより、眠るように死なせてあげたい

そう思ったので選択しました

賛否両論あると思いますが

これが獣医師としてまた飼い主としてのわたしの選択でした

 

そしてこの後、ラト丸を解剖しました

(これも賛否両論あると思いますが・・・)

そして私はまた後悔するのでした・・・

続きは次の記事で!

今回は長い記事になってしまいましたが

ここまで読んでいただきありがとうございました

 

質問等あればインスタDMなどでどうぞ

インスタはこちら

@chaso_vet

 

ラト丸

短命で逝かせてしまってごめん、獣医師なのに救えなくてごめん

でも君のおかげでラットの可愛さ、すばらしさを知れた

うちに来てくれてありがとう また会いたいよ

わたしがそっちにいくまでもう少し待っててね